2025年2月26日水曜日

【 アメリカから学ぶものはなくなった ] 〜 もう憧れはいらない 〜

【 アメリカから学ぶものはなくなった ] 〜 もう憧れはいらない 〜

敗戦の余韻が残る頃に生まれ育った僕は、外国からのものに目を奪われ、刺激を受け、憧れ、羨ましく思ったものだった。音楽、映画、ファッション、電化製品や車に囲まれた日常の生活。人生ってこんな風に楽しむものかと、カルチャーショックを覚えた。戦前教育を否定し、民主主義が導入され、男女平等、すべての者が幸せに生きる権利を与えられた。あれから80年。今や欧米だけではなく、アジア諸国からも日本の伝統、文化、食、風景、自然、習慣や考え方、生き方にまで興味を持って日本に押し寄せてくる。民主主義のお手本にしていたアメリカは、トランプ大統領の再登場で独裁国家ではないかと思えるほどの危険な状況だ。リベラルな人もほぼ同数いるので、そのうち振り子は戻るとは思うが、鞍馬天狗や大岡越前、遠山の金さんは現れない。心の底に眠っていた差別意識や排斥感情が頭をもたげてきた。大航海時代に戻っているのだろうか? 

一方で日本は今オーバーツーリズムで今まで築いてきた大切なものが崩れ去ろうとしている。日本の情緒、侘び寂び、淑やかさ、たおやかさ、奥ゆかしさ、相手を立てる、察する、気遣う、譲り合う、お互い様、助け合う、協調性、公共心、清潔感、節約する、辛抱する、胸に収める、感情・情景表現の深さと語彙の多さ… … それをある時は逆手に取られ、日本の貴重な遺産、土地や財産、資源、領土までも脅かされ、観光地では悲鳴を上げている。日本人のお人好し加減も安穏としていると国家の存続にも関わりそうだ。

今ロサンゼルスの家のリニューアルでカーペンターをしている。プロの大工さんも来ているが、その仕事ぶりや技術、日本の技にはかなわないだろう。合理的でコスパには優れているが、日本人の細かい丁寧な、真面目にコツコツと、根気強く最後までやり遂げる職人技には素晴らしいと思う。

日本食には世界が注目している。スポーツや芸術、医学や科学、工業技術の世界でも、もう肩を並べ、堂々と競い合っている。時代は変わった。もう臆することなく憧れることなく、堂々と勝負してほしい。危惧する事は、平和な日本で恵まれすぎて育ってきたのんびりとした人の良さによる危機感の薄さと、長い歴史の中で、培ってきた日本人の伝統や精神を忘れてしまうことだろうか…  今日ロサンゼルスは27度の初夏の陽気です。日本の冬も峠を越したでしょうか…