東日本大震災から3年半、僕は自分の仕事である歌を被災地に届けてきた。僕にはそれしかできなかった。それが被災者のみなさんにどれだけの力になるか、役にたつのかはわからない。傷ついた心の中にゴソゴソ入って行き、かえってさざなみを立てるようなこともあったかもしれない。僕は今回仮設住宅などで歌を届けていて、もうひょっとして僕の役目は終わったかなあ。必要とされていないかもしれないかとふと思った。それはある面いいことかもしれない。もう歌など聞かなくても大丈夫だ。
それより前に向かって歩き出すんだ、仕事をするんだ。そんな瞬間が何度かあった。車で走っているとあちらこちらに沢山の応急仮設住宅が残っている。いつ落ち着いて自分の家に住めるかわからない。仮設住宅の生活はずっと仮の人生なのだ。「歌はいいよ~。歌に癒され歌に助けられることもあるんだよ~。」「あんたの歌も聴いてみたいね~」仮設で暮らしながら、流された魚屋をいつか再建するんだと頑張ってるおばちゃんがポツリと話してくれた。国道沿いのプレハブで美容院を再開したお姉さんも歌が大好きだという。「島津亜矢大好きだよォー…ヘェ~あんたが作ったんかい!大したもんだあ~」ガソリンスタンドに働くおばちゃんも「今度9月19日の仙台の島津亜矢のコンサートに行くんだ~」なんて言ってくれる。楽しくても辛くても、どんな状況にあっても、たぶん歌は身近にあるもんで、必要とされてるんだな~とあらためて教えてもらった。まだ歌ってていいんだ。僕のように誰にも知られていない歌唄いでも、待っててくれる人がいるんだ。もう少し続けられるような気がしてきた… 皆さんに助けられている…